複雑相互作用を考慮した多ホスト-多パラサイト系の共進化動態による生物多様性・ 遺伝的多様性維持機構の解明

伊東 啓
(長崎大学 熱帯医学研究所 講師)

2016年12月12日月曜日

秘境ムスタン地方での疫学予備調査(ネパール):後編(完)

前回までのあらすじ

ネパール高地の疫学調査の予備調査に参加した伊東はカトマンズから車で丸4日かけてムスタン(ムスタン王国)の首都ロマンタン"Lo Manthang"に辿り着く…

まだご覧になっていない方は、 《前編》 と 《中編》 をご覧になってください。



●7日目 ロマンタン

ロマンタン(標高約3800m)の朝です。ここはホテルの食堂です。相変わらずネズミの煩い夜ですが、あまりに疲れていて気になりませんでした。ここでは朝の気温が氷点下まで下がります。もちろんエアコンはありませんので、室内も0℃です(私の腕時計で計測)。

お湯のシャワーはもちろん浴びれませんが、朝は水道管が凍って水も出ません。でもなんかこういう生活にも慣れつつあるところが怖いです。




ホテルの食堂から分かるように、チベットの色調です。
やはり疲れと高度のせいか全体的なパフォーマンスが落ちている気がしました。
何度寝袋を畳んでも上手く袋に入れられなかったり…
もうちょっと居れば慣れるのかもしれません。





今日の目標は、現地の人数名を実際に調べさせてもらうことです。まず、街の探検から。
細い路地が多い町並みです。石造りというかレンガ造りの白い壁に黒や緑で縁取られた窓枠が特徴的です。

基本的にムスタンエリアの地表は白っぽい岩石で覆われているので、目が痛いです。サングラスは必須です。




町並み。


細い路地。








伝統あるクリニックです。ロマンタンでは西洋医学があまり入っておらず、このようなハーブ療法が行われてきました。近代医学の薬を買いに行くには、私たちが通ってきた道を往復して買って来なくてはなりません。




野良牛。ネパールはヒンドゥー教が多いので、牛はウロウロしています。チベット仏教がメインのロマンタンでも牛がいます。でも、高度3800mでは大きく育つことができないため、かわいいサイズです。


さぁ、メインの調査です。前もってコンタクトをとっておいたネパール政府から現地に派遣されているスタッフに頼んで、何人かロマンタン生まれの老人に声をかけてもらいました。



左の白い椅子に座ったピンクの帽子を被っている方が、ロマンタン生まれロマンタン育ちのおばあさんです。そのその奥にも二人います。




緑色の帽子を被っている方も生粋のロマンタン人です。日焼けがすごいですね。
ちなみに皆さんチベット語を話します。
しかし文字は読めず、自分のサインも書けません。ここでは拇印を押してもらいます。

また、ネパール語→チベット語への通訳が必要です。ここで我々が英語でアーダコーダ言うとさらに混乱を招くので、私と中野先生は静かにしています。



屋上からの風景。




とんでもないところに来たもんです。
砂ぼこりで計測機器の精度が落ちないか心配です。また、バッテリーの問題も次回は解決しなくてはいけません。
ホテルに電気は通っていますが、充電にはお金が必要です。車のエンジンを動かして充電するのが良いのかもしれませんね。




当初、現地のネパール政府のスタッフからは、
「生粋の現地の人は、警戒心が強く、協力的ではないよ」
と言われていたので、テストもできないと思っていたのですが、協力的なおばあさん達のおかげで無事に予備調査を行うことができました。
貴重な写真まで、ありがとうございました。ダンネバ(ネパール語でアリガトウの意)。


ちなみに、ネパール語が通じない上に、おばあさんが3人揃ってしまうと井戸端会議が発生してしまい、大変な時間が掛かってしまいました。本調査ではちゃんと効率の良いシステマチックな仕様にしなくてはいけませんね。


その他、撮影禁止のエリア(洞窟に掘られた寺院や、チベット仏教の様々なものが置かれた美術館(もうほぼ蔵で触れちゃうものもあり))を観光して戻ります。

見たい人は現地へ(笑




そういえばあまりご飯を紹介しませんでしたね。これはネパール人がいつも食べている「ダルバート(左の大皿一式)」です。右はムスタン名産のリンゴを使ったアップルパイです(現地の人は食べません)。

これはロマンタンで食べたダルバートなので、「元祖ダルバート」らしいです。
どこのダルバートも、
・米(細長い乾いた米)
・ジャガイモのスパイス炒め
・サグ(ホウレンソウか小松菜)
・ダール(豆のスープ、日本で言う味噌汁ポジション。その日によって味付けを変える)
これに少量のチキンカレーがつくこともあります。これがダルバートです。

これを右手で混ぜながら食べます。
「俺も右手で食べた方がいいのか?」
といつも思うんですが、この乾燥地帯では手の汚れも尋常じゃないのと、いつもスプーンを出してくれるので私はスプーンを使ってしまいます。

ちなみに各種おかわりできます。


ネパールの人は基本コレを毎昼・毎晩食います。私も最初は、
「ダルバートうめぇ~。ネパール住めるわ」
と3日間ほど調子乗ってたんですが、毎昼毎晩食べてると。
「いや、もう飽きた…違うもん食いたい…」
という気分になります。

この辺りは人によるとしか言えません。でも味付けは日本人にとてもウケると思います。
その他にトゥクパというウドンみたいなものや、モモという餃子とショウロンポウの間のような食べ物があります。
私はダルバート、トゥクパ、モモをローテーションしていました。



●8日目 ロマンタン~ジョムソン

予想以上に順調に調査が進んだので、山を降ります。
下りは一日で行けます。
最初聞いたときは、「いや、うそだろ」って思いましたが、実際できちゃうので凄いですね。


はぁ…またこの道かよ…
ちなみにこの調査での移動は全て酔い止め薬必須です。
乗り物苦手じゃない人も準備しておいた方がいいです。



各村々の看護師さんへの報告と挨拶のために何箇所か立ち寄ります。



車にも触れておきましょう。
道中大活躍してくれたこのピックアップトラックは「Mahindra社のBolero Camper」です。
2523cc の直噴ターボディーゼルエンジンを持っています。

エアコン、パワーステアリング、窓の電動開閉 等はありません。
この砂漠のようなエリアは電装系に負担がかかるため、単純な機構の古き良き車がここでの最適解です。
もし本調査で、最新技術とコンピュータ制御の利いた高級なランドクルーザー、レンジローバーといったジープを選択できたとしても、私はこのエリアに関してはこのマヒンドラ社のこのボレロを推薦します。



ここだけちょっと死にそうだったかもしれません。



山からは水が染み出してる箇所がいくつもあり、小さな川を構築しているのですが、日陰ではそれが凍ります。
スリップしたときはさすがにちょっとビビリました。ちなみにこの右側はご覧の通り崖です。




いやぁ、無事に帰れて良かったです。


だんだん高度が下がるにつれて緑が戻ってきます。
畑も大規模になっていますね。





立ち寄った村の女性たちが何か作業しています。



緑溢れる世界に戻ってきました。ダウラギリ氷河です。美しいですね。



翌朝のジョムソンでの一枚。4日ぶり位に熱いお湯でシャワーを浴びたため、清清しい顔をしています。
フィールドワークをやる研究者にとっては余裕なのかもしれませんが、普段コンピュータの前に座っているだけのシステムエンジニアにはとても新鮮でキツイ旅でした。

でも、せっかく熱研(ねっけん:熱帯医学研究所の略称)に、それも国際保健に配属になったんだったら、それらしい仕事をしてみたいという希望は叶えられました。


また、初のネパールでしたが、ネパールの人々は皆とても親切だったことが印象的です。「ダンネバ(アリガトウ)」って言っておけば大概上手くいきます。


他にも色々な変なことが起こったし、いろいろネパールについて語りたいところですが、とりあえずこの調査の報告はこの辺で。



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