複雑相互作用を考慮した多ホスト-多パラサイト系の共進化動態による生物多様性・ 遺伝的多様性維持機構の解明

伊東 啓
(長崎大学 熱帯医学研究所 講師)

2017年9月20日水曜日

伝染病株式会社

「Plague Inc. -伝染病株式会社-」はiOS/Android対応のアプリケーションです。

簡単に言えばスマホアプリのゲームです。
このゲームは新種の感染症になったつもりで人類を全滅させることを目的とするすげぇゲームです。いや、良い着眼点だと思います。感染症の立場になっているところが面白いところです。

OP画面。いや、なんか不安になるこの感じ、初めて熱研でバイオハザードマークを見たときに似ています。

とりあえずチュートリアルをやってみますかね。

伝染病の養成学校ってなんやねん!という感じですが、とりあえず教えてもらおうか。


まずは伝染病の名前を付けます。う~ん。伊東病も変なんで、「ジャパンプライズ病」にしよう。新しく出てきたから、新興感染症のカテゴリなんでしょうか。

そろそろジャパンプライズさんから「伊東先生、申し訳ないんですけど、もうブログ辞めてもらえませんか?」って来るかもしれません。いつでも怒られる準備できてますよ!


ジャパンプライズ病爆誕(伊東博士がジャパンプライズ研究助成を受けて発見した病気という設定)

チュートリアルは中国に第一感染者が現れます。どうやらこのゲーム、発展途上国だと感染が広がりやすいとかいろいろ凝った要素があるようです。

まずは「伝染」を上げて感染者を増やします。




こういう時は人の立場になって一番厄介な媒介方法を考えればいいわけです。
う~ん、蚊かなぁ…
その他にも家畜や鳥などを媒介に感染を広げることが出来ます。


次に症状です。



ここが興味深くて、大体存続している病気は「弱毒化」する傾向があると言われています。つまり感染症は人類と共存して行く上で弱くなるということです。なぜなら、ホスト・宿主である人を殺してしまうとパラサイト側の自分(病気ですけど)も死んでしまうので、共存を考えると弱毒化するのが実は生物学的には良いとされています。

そもそも病原体と呼ばれるものだって、彼らが意思を持って「宿主をぶっ殺してやる!」とか思っているわけではないですし。単純にそれが病原体にとって都合がいいか悪いかに帰着します。もちろん、ホストが死亡した方が病原体にとって都合がいい場合は致死性が高くなるとは思いますが。

かの有名なロバート・メイ博士は(ジョン・メイナードスミス博士だったかも)、
「病原体が一番人に適用した状態は、病気であることにホストが気付かないような(ほとんど影響がない)状態のはずだ。なぜなら、病気を起こしてしまうとホストを弱らせ、殺してしまい、家を失うのと同じことだから。病気が発生してしまうのは、まだホストに適用仕切れていないからではないか」と述べたらしいです。受け売りなんで本当そう言ったかは分かりませんが、言っていることには説得力があります。

つまり、一番やっかいな病気は気付かれないような存在であったり、「死ぬほどじゃない」ということです。死ぬほどの病気は基本的に最優先で対処されてしまうからです。
病気を病気たらしめるのは、「死なない程度の病原性」だということです。これは私のブログ「ネトゲで流行った感染症」で復習してくださいね。

しかし、今回の目的は人類を全滅させるという生物学的には大失敗にもほどがある結末に持っていかなければなりません。なぜ大失敗かと言うと、人に感染する病気なのに人類を全滅させたらそもそも病原体が成り立たなくなってしまうからです。この病気はヒト以外にも感染してヒト以外に感染していれば十分に存続できる病気なんでしょうかね(かといって人類を絶滅させる必要も無いですけど)。

とりあえず悪さしないバクテリアとして勢力を広げていきます(その他にも真菌やウィルスなどになることもできるようです。私はペーペーの初心者なのでバクテリアしかできません)。


ミッション「人類を絶滅させろ」という目標に対して、恐らくここでの最適解は、

「人類にバレずに感染者を増やし、一気に病原性を進化させることで薬の開発が達成されないうちに人類を屠る」

というものでしょう。
渡航制限や薬品の開発など、なんかそんなような空港マークや薬マークが見えるので、これらの対策がなされないようコッソリ勢力を伸ばして、対策が本格的になったところで一気にヤバい病気に変異するということです。

したがって、しばらくはおとなしい人畜無害の病気として勢力を伸ばすのが肝要…



…って言ってるそばから思惑外のことが起こりました。いやいや、発疹とか目立つようなことせんでくれや…治療法が確立されてしまうやないですか。

以下、右上の日付が時系列になってないことがありますが、あまり気にしないでください




とりあえず世界中に勢力を伸ばします。




さて、感染症が広がってきました。まだここでは発疹を起こす大したことのない病気です。ですが存在が気付かれてるので、ちょいちょい世界が騒ぎ出します。


あーあ。オリンピックなんてやってるからだよ。日本ももうすぐオリンピックですね。


世界も認めるジャパンプライズ!世界の伝染病ジャパンプライズ!
(今のところ致死性は無く、発疹を起こす地味な病です)

あああああああああ。恐れていた事態が。

右下のCureが1%になりました。これが100%になると治療法が完全に確立されたことになり、こちらの敗北です。決着が近い…。左下のDNAポイントを使用して病原性を上げるしかない。


ニュージーランドを中心としたチームが研究を始めます。やばい。ここからはスプリント勝負です。致死性を一気に獲得して人類を抹殺するか、治療法が開発されてこちらが撲滅させられるか二つに一つです。

そんな決着の到来を予感してか、日本は空港を閉鎖します。

鎖国だー。ちなみに伊東はいつも心の鎖国をしています。

さて、薬の開発とスピード勝負です。ここらで一気にいかせてもらうぜ。

ちなみに、現在話題になっている抗生物質の効かない薬剤耐性菌ですが、既に薬の開発スピードは薬剤耐性菌の出現スピードより遅いことが知られています。抗生物質の無用な乱用は控えましょう。


勝手に炎症を獲得するジャパンプライズ病…もう手が付けられない



なんということでしょう…フランスで最初の死者が出ます。
「薬の開発はどうなってるんだ!」ということで、いまの世界の対応を見てみましょう。



治療の確立まで4年かかると出ています。ジャパンプライズ病の余命も4年ということです。しかし、コッソリと世界中に潜んでいた甲斐があったというもの。すでに世界中にキャリア(感染者)が広がっているので、最早手遅れです。ぐふふ。

ちなみに、この治療法確立までの期間ですが、薬剤耐性を獲得するなどして開発期間を延ばすことができます。




アチャー。日本崩壊。
先進国が崩壊すると治療法の開発が鈍化します。



ということで、人類滅亡です。お疲れ様でしたー。
治療法の開発も73%まで進んでいたので、危なかったですね。




勝利!…これはめでたいのか?。





まぁどんなもんよ。
こちとら長崎大学熱帯医学研究所の国際保健学分野で機関研究員をしていたんですよ。今でも客員研究員なんですよ。感染症モデリングやってる学者が本気出してゲームすればこんなの朝飯前ですわ。



って感じで、本番の難易度ノーマルでやってみよー!






ってあれ?

根絶!


なんつーか。あれですね。時系列的に重要度が変わるんですよね。

薬の開発開始前:伝播力>病原性(病原性は無ければ無いほどバレずに済む)
薬の開発開始後:病原性>伝播力(世界中の人が感染していればもう伝播力は不要)

と重要度に逆転が起こるので、私みたいにいい気になって伝播力を上げても、感染が十分に広がった後には無意味になってしまうんですね。いやぁ勉強になります笑


まぁそんな感じで、遊んでるだけに見えますが、私としては遊んでいるだけではないつもりです。というのも、今期から4年間、私が代表の研究課題が科研費:若手研究Aが採択されました。題名は、
内容をこれでもかと言うくらい大雑把に言うと、この伝染病株式会社の薬剤耐性菌バージョンを作るという感じです。
時々なんか面白いシミュレーションゲームがないか探してたりしたのですが、このゲームは最近話題になっていたので、何か研究面で得るものがないかと思いやってみた次第です。

まだノーマルもクリアできてないので、もうちょっとやり込まないとなんとも言えませんね。うん。


2017年9月4日月曜日

極地研の南極・北極 科学館

先日、立川にある統計数理研究所で「ネットワーク科学セミナー2017」が開催されました。

複雑ネットワークは物理学の分野で大きく発展しましたが、これは感染症モデリング(疫学モデリング)に応用することができます。

感染症モデリングは、医師がやっているように思えるかもしれませんが、物理学者や工学者の力が欠かせないんです。なので、実際に病気を見ている医師と、他分野に跨る数理モデラーの協力が良い研究に繋がります。

今回のセミナーは、知り合いの先生に誘われたので一応行ったんですが、私が一番に心を奪われたのは研究発表ではなくペンギンです。


かわいー。
このペンギン、私好みのモニョっとしてフォルムと闘志を帯びた曇りなき瞳をしています。
私こういう目に弱いんですよね。

統計数理研究所は、極地研究所と併設されているかなんかそういった事情で、「南極・北極科学館」が隣に建てられています。




色んな所にいるペンギンがかわいい。

入るとなかなかの規模です。




南極・北極と言っても、ほとんどの部分は南極が占めています。
やはり南極と北極で予算分配が相当違うんですかね。






















左が第一次南極越冬隊の装備で、右が現在の装備です。
昔の装備はゴアテックスとか無かったから、汗が冷えると相当ヤバそうです。



雪上車です。すげー四角い。
乗れませんが、後ろが開いているので、そこから中が見えます。
中は一緒にいた先生曰く「古い機関車の匂いがする」




南極の越冬隊が過ごす部屋です。意外と良い感じです。
私がいま住んでいるアパートの部屋より遥かに居住性が高そうです。

でも実際は白夜と極夜があるので、越冬隊の生活を映したビデオを見ていて「これ自律神経失調症とかになりそう」と思ったりします。せめて居住空間は快適じゃないとダメなんでしょうね。





私は南極物語をよく知らないんですが、カラフト犬たちが引っ張っていたソリです。




外にはそのカラフト犬たちを称える銅像が立っています。
このあたり、私より世代が上の先生たちが「おお~、あの」みたいな感じでテンションが上がる部分です。

感想としては、
いやぁ~、南極行ってみてぇ~(でも1年はちょっと…)

私が客員で所属している熱帯医学研究所(熱研)も、「熱研ミュージアム」というのが建てられていて、結構見ごたえがあります。熱研と極地研はカバーするところが違えど、危険な場所に研究に行くという意味では共通点を感じますね。

南極・北極科学館にはペンギンとかの剝製がおいてありますが、我が熱研ミュージアムには蚊の標本とか置いてあります。

デートで来るなら熱研ミュージアムより南極・北極科学館のほうがいいかもしれませんね…。でも熱研ミュージアムも来てください(営業)。




そういえば、日本進化学会から第17回日本進化学会研究奨励賞をいただきました。
今年は科研費も賞も大漁でうれしい限りです。

2017年7月6日木曜日

信長の野望とシミュレーション

前回の「ネトゲで流行った感染症」が結構読まれていました。みんなゲームの話が好きなんですね。私も好きです。


先日とうとう「信長の野望 創造 withパワーアップキット(通称:創造PK)」と、「信長の野望 創造 戦国立志伝」を買ってしまいました。(以下、野望と呼称します)
いや、ほんと、歴代野望の中でも最高傑作ですね(創造は微妙です。PKか戦国立志伝をおすすめします)。

信長の野望 創造:http://www.gamecity.ne.jp/souzou/
信長の野望 創造 戦国立志伝:http://www.gamecity.ne.jp/souzou/sr/index.html

このゲーム、信長の野望シリーズの最高傑作だと思われます(特に立志伝)。
信長の野望は戦国武将になって、天下統一を目指すゲームなのですが、やはり魅力はその豊富な武将データでしょう。
なんと2106人もの武将が登録されており、その一人ひとりに顔と能力値が設定されています。

例えば私の地元「静岡市」といえば街道一の弓取り、今川義元でしょう(静岡の武将で徳川家康とか言っている人はすぐ戻るボタンで去ってください)。
今川義元は桶狭間で織田信長に討ち取られるため、野望のキャラとしては不遇の時代を送っていました。しかし、時代が進むにつれて再評価が進みました。これも静岡大学名誉教授の大和田先生の功績でしょう。

そしてそれはゲームの顔グラ(顔グラフィックの略)に現れています。
右下(天翔記)が最も古く、左上(天道)に向かって新しい作品です。
麻呂眉の冴えないデブから一気にイケメンに。ちなみに、私は大河ドラマ「風林火山」で谷原章介が義元を演じたときから美化が始まっている気がします。

「今川義元 信長の野望」の画像検索結果
https://www.nobuwiki.org/nobu_cg/nobucg_01

さらに最新作(創造)ではこの通り、

「今川義元 信長の野望」の画像検索結果

もはや当初の面影はありませんが、なんか強そうです(実際超強い)。

さて、能力値の話に戻りますが、下は昨年の大河ドラマ「真田丸」でまた話題になった「真田昌幸」です。役者さんで言うと草刈さんです。

「信長の野望 創造 能力」の画像検索結果

このように、統率や武勇といった能力値は1~100(育成によってはそれ以上)で与えられており、合戦や内政で効果を発揮します。これらは実際の歴史上のエピソードや功績にちなんで与えられている数値です。真田家はエピソードには事欠かないので、全作通じて強いです。最近ますます強くなってるような…

こんな数値をいちいち振り分けた武将が有名も無名も含めて2000人もいる訳です。KOEIすごい。

こういった武将達がせめぎ合いながら天下を目指すゲーム、信長の野望。これはまさにエージェントモデルと言えるでしょう。個体「エージェント」にはそれぞれ特性(ゲームでいうところの能力値)が与えられ、個体差を持った個体同士が複雑に相互作用することでシステム全体でどのような挙動をするのか観察できるのがエージェントモデルです。むずい?

エージェントモデルは、細かく言うと、
・agent model
・agent-based model
・individual-based model
とか呼び方が色々ありますが、全部たぶん一緒です。生態学ではIndividual-based model (IBM)の名称が良く使われます。
IBMの良さは、従来の数理的モデルと違い、「個体差」が導入できる点です。「個体差」は数学モデルでは扱うのが難しいので、複雑なシミュレーションを構築する必要があります。

個体差があると、何が良いのかというと、例えば
「偶然個体Aに突然変異が起きて、たまたまその遺伝子が環境に適応してたので、たまたまAはBと交尾に成功し、たまたまAの変異遺伝子がメンデル遺伝で子Cに引き継がれて、最終的にその遺伝子が集団内に浸透する」
といった感じで「偶然」とか「たまたま」が再現できます。そうすれば進化の様子が再現できるわけですね。
分からん人は私の素数ゼミの論文でも読んでください。
コレ:https://www.nature.com/articles/srep14094

信長の野望でも同じです。たまたま信長が若いうちに討ち死にしたら、天下統一するのは秀吉じゃないんじゃないでしょうか?
信長の野望は、普通にやると「大友家」「島津家」「武田家」「上杉(長尾)家」あたりがフツーに強いんですが、じゃあ毎回コイツ等が勝つかと言うとそうでもないところが面白いわけです。なぜなら、たまたま優秀な武将が討ち死にしたり、病で死んだり、内通で引き抜かれたりすることで様相が変わるからです。

実際に個体差は世界を構築している大きな要因です。個体差が有るから、環境の変化に適応できる訳です。これまでは複雑な計算はパソコンに負荷がかかるのであまりされてきませんでしたが、もうすでにどんどんそういったことが可能になっています。

私の経験上、大学教員を含め、優秀なモデラーは皆KOEIのゲームをやり込んだことがある人々です(維新の嵐とか)。先日、「子供がゲームばかりして困る」というお母さんと話しましたが、「しっかりゲームしない奴は良いモデラーになれませんよ」と言っておきました。

恐らく、ゲームをしている子は1ステップ、1ターンという「時間単位」の感覚や、命中率とかで「乱数」の感覚が養われているからだと思っています。


まだまだ野望について語りたいことがありますが、最後に私の野望の楽しみ方をお教えしましょう。

1.まず今川義元で天下を目指します。軍師、太原雪斎 が寿命で死んでしまう前に織田家の優秀な武将を取り込み、信長を屠らねばなりません(当時小学生の俺に父が教えてくれました)。難易度は比較的低いです。

2.義元が桶狭間で討ち死にしたあと、息子の氏真で天下を目指します。四面楚歌で普通にムズいです。しかし、親の敵である信長と裏切り者の家康は首を刎ねなくてはなりません。

3.剣豪将軍、足利義輝で天下を目指す。最初から既に将軍なんですが、幕府の権威は地に落ちています。足利将軍家の栄光を取り戻すために天下を目指します。これは弟がやっていた将軍家再興プレイで、当時「なんてかっこいいことするんだ」と感銘を受け、私もやるようになりました。


みなさんも、シミュレーションモデルを作る前にしっかりと信長の野望で下地を作ってください。

2017年5月2日火曜日

ネトゲで流行った感染症

昨年度、熱研(長崎大学熱帯医学研究所)に居た頃、仲良くしてもらっていた同僚の先生から、

「伊東君、中学生の頃オンラインゲームにハマってたんでしょ?」
と聞かれたので、

「そうっすね。朝3時に起きてゲームしてたりしましたね。親にLANケーブル隠されるくらいにはやりましたよ。」
と答えたところ、

「オンラインゲームで感染症が流行ったこと知ってる?」
と紹介してもらった話が今日の話題です。別に私が研究した内容ではありません。


スマートフォンや携帯ゲーム機が発達した昨今では、オンラインゲームは珍しくもありませんが、2000年代の初頭では多人数参加型のRPG(MMORPGとか呼ばれますが)は非常に画期的かつ中毒性の高いコンテンツでした。


特に剣と魔法を使って冒険するタイプのファンタジー系ゲームでは、その自由度に驚かされます。一応魔王を倒す的なストーリーもあるのですが、ロールプレイに全く縛りがないので、

・魔王もモンスターも無視してずっと海辺で魚釣りをして、魚を売ってる人とか
・ずっと炭鉱に篭って金属を掘り、合金を作って売ってる人とか
・移動の魔法を使って人を移動させるタクシーやってる人とか
・効果なアイテムを落とすモンスターが出現するのを、何日も張り込みして待ち構えてる人とか

まるで勇者感がありません。が、
この世界は需要と供給によって物の値段が変動するので、商人・職人・狩人・漁師・炭鉱夫・タクシードライバーのように、色々な人が色々なプレイを楽しむことができる訳です。


こういった世界では、基本的に境界条件として、
「安全な町」と、「モンスターの居る危険な町の外(平原・洞窟・ダンジョン・森・砂漠もろもろ)」
という2つの領域があります。

通常モンスターは町の中に入ってこれないため、死ぬこともなく、安全です。
しかし、とある条件が重なり、町の中にモンスターが使う「病気」を持ち込むことが成功してしまった事件があります。


「Corrupted Blood事件」
2005年にMMORPG「World of Warcraft」というゲーム内で起こったパンデミック事件です。

とあるダンジョンのボスが使用する攻撃魔法「Corrupted Blood」は、対象プレイヤーに3秒間ダメージを与えるもので、周囲に居るキャラクターに感染する特徴がありました。

通常、この病気がダンジョン外へ持ち出されることはありませんが、(ゲームアップデート時のバグもあり)あるプレイヤーによって町にもたらされました。

この病気は、体力のある高レベルプレイヤーには大した影響はないのですが、体力の低い低レベルプレイヤーは死に至る場合があります。
町中は安全だと思っているため、町は屍で溢れました。

「Corrupted Blood lancet」の画像検索結果

(う~ん、死屍累々。ちなみにこれ、れっきとした医学系Lancet infectious diseasesのFigure 1です。死亡すると白骨化します。引用:E. T. Lofgren & N. H. Fefferman


ここで興味深いのは、当時のプレイヤーが現実的な行動をとっている点です。

・治療できる魔法を使える人は、治療を申し出る
・感染して死んだ者が、「ここから離れろ!」と指示をする。(オンラインゲームではよく死んだ後もチャット機能が使えたりする)
・未感染者は感染者と距離をとり、みな避難する
・感染者の隔離を試みる
・言うこと聞かずに、わざと感染を広げる奴が居る(重要)

結局この病気により、町はパニックになり、主要な町と都市はうち捨てられ、生き残ったプレイヤーはどんどん田舎に逃げていったということです。

「Corrupted Blood lancet」の画像検索結果

(こいつが病の元凶The primary source of infectionです。ちなみにこれがFig.2です笑 引用:E. T. Lofgren & N. H. Fefferman


このパンデミック現象は、バーチャルリアリティではあるものの、パンデミックが発生したときに人がどのような行動をとるのかという点で非常に注目を集め、学術誌「Lancet Infectious Diseases」に論文まで載りました。


特に「パニック」、「スーパースプレッダー(感染をめちゃくちゃ広げる人)」、「言うこと聞かず感染を広げる人」などの存在は、実際のパンデミック現象に立ち会わなければ再現されない点です。


このあたりは英語のWikiとかにも書いてあるのですが、感染症数理をやっている人間が一番注目すべきは、その基本再生産数でしょう。

基本再生産数R0(アールゼロとか、アールナウト、アールノートと呼ばれる)は、その感1人の染者が平均何人に病気をうつすか?という病気の感染力を示す指標です。したがって、R0=3の場合は、感染者は平均して3人に病気をうつし、新規感染者を作っていることになります。R0が1よりも小さい場合、1人の感染者は1人以上の感染者を生まないため、時間と共に感染は終息していきます。逆にR0>1の場合は感染が拡大します。そのため公衆衛生ではR0<1とするような変数をとれば、感染の拡大を抑えることができるため重宝されています。


さて、「きわめて感染力の高い」麻疹はR0=12~18と言われています。
今回のCorrupted Bloodは、R0が推定で100(10^2)を越えていたということですから、どれだけ恐ろしい病気かわかると思います。この病気が3秒しか持続しないことを考えれば、空間的接触だけでそれだけのR0をたたき出すことができることを示しています。


このあたりは論文の本編に書いてありますが、一般の人はあまり着目していないため、記事になっていません。

そして、病気が病気たりえる条件は、「死なない程度の症状」という性質に起因することもこの例は教えてくれています。
(あまりに強い毒性は、保菌者を殺してしまうため、感染症として成り立たない)


結局運営側がサーバーを落とし、病気をダンジョン外へ持ち出せないように変更することで終息したと言います。


長崎から東京に引っ越して一ヶ月。大学の近くにアパートを借りましたが、ときどき乗る満員電車でいつもこの事件を思い出すんですよね(ゾクゾク)。


今回紹介した論文

2017年4月18日火曜日

森竹(今年度助成)と俺(昨年度助成)

今年の研究助成のメンバーを見たら、良く知った名前がありました。

「森竹勇斗」

理研の研究員です。


森竹(昔と同じようにモリタケと呼び捨てにしますが)と私は中学高校の同級生です。

静岡学園という学校の、中高一貫に通っていたのですが、当時の我々の世代の中高一貫(通称「一貫」)クラスは35人程度しか居ない少数クラスでした。

中学高校の6年間一緒にいるので、みな兄弟みたいなものです。
クラスメイトには本当にイカレた奴らが多かったと思います。小学校が退屈だった私には、刺激的でとても良い思い出です。


森竹は学校で一番勉強ができる奴でした。それを鼻に掛けない、心優しい良い奴です。
最近のネット用語で言うと、「ぐう聖(ぐうの音の出ないほどの聖人)」です。

私はというと、中学時代はネトゲにハマったり、大学生との部活や遊びに夢中になったりして、「お前、一貫じゃなかったら行ける高校どこにもないぞ?」と担任に言われるほど落ちこぼれでした。
高校で多少持ち直すのですが、大人を嘗めた態度をよくとっていたらしいので、教員陣からあまりよく思われておらず、何かと「白い森竹、黒い伊東」みたいな感じで比較されることも多かった気がします。森竹もそう言っていたので多分そうです。


そんな感じでタイプが正反対でしたが、不思議と馬が合い(森竹は誰からも好かれる)、クラスメイトの中でも特に一緒に居ることが多かったです。大学受験も一緒に行った記憶があります(私は落ちましたが笑)。


そんなこんなで大学に入ってからはほぼほぼ連絡を取っていなかったんですが、お互い博士課程に進み、二人ともJapan Prize研究助成に採用されたわけです。


わずか35人程度のクラスから2年のうちに2人もJapan Prize研究助成に採用されるというのはかなりレアなんじゃないでしょうか。


最後に直接会ったのは去年の3月で、お互いに本当にしょうもない思い出話をしていたのですが、その中で、
「あのクラスで研究者の道に進むとすれば、自分以外ではお前しか居ないと思っていた」
と互いに話あったのが印象的です。




1年前の写真

森竹と私は多分いまもスタイルは真反対かもしれません。
ですが、お互いにまだ科学の世界で生き残っているということは、喜ぶべきことだと思います。


2017年3月22日水曜日

奨励賞(鈴木賞)授賞式と受賞講演@日本生態学会

3月17日に日本生態学会の各賞授賞式が行われました。


場所は早稲田大学大隈講堂です。


自分は第5回日本生態学会奨励賞(鈴木賞)の受賞者として参加しました。




当たり前ですが、結構カッチリした式でした笑
受賞理由は簡単に言うと、「いっぱい論文出したね!偉いぞ!」という感じです。多分。


さて、午前中が授賞式で、午後が受賞講演です。
この時間の学会イベントは受賞講演だけなので、結構多くの人に聞いて貰えるのが良い所です。絶好の営業機会です。

大隈講堂の二階席まで多くの方に聞いていただきました。






シミュレーションの話をしています。


演題は、
「環境変動とシミュレーション ~周期ゼミから薬剤耐性菌まで~」
ということで、内容はざっくり言うと、

周期ゼミの進化を再現するために用いたシミュレーションモデルが、今後、薬剤耐性菌の拡散を防ぐ方法を導いてくれるかもよ。

という感じです。


最後の締めの挨拶で、

「次は宮地賞(奨励賞の一つ上のカテゴリー)の受賞講演でこの舞台に上がります。」

と相変わらずビッグマウスが自然と口から出てしまったので、本当に狙って獲れるよう業績を積み上げるのみです。


ちゃんとJapan Prize研究助成のことは謝辞に入れておきましたので!

2017年3月13日月曜日

創部10周年

先日、大学時代の部活の後輩が結婚すると聞きました。
めでたい話です。
晩婚化が叫ばれる中、部内初の既婚者の誕生です。
彼らと部活に打ち込んでいた日々を思い出します。















私は大学入学と共に、静岡大学体育会公認テコンドー部を浜松校舎に創設しました。
10年前のことです。当初は3人で部活を始めました。

そもそもなぜテコンドーをやっていたかというと、中学時代にオンラインゲーム(Final Fantasy XI)に熱中しすぎて、「コイツは道を踏み外してしまうんじゃないか」と憂慮した父に、静岡大学テコンドー部(静岡校舎)に連れて行かれたのきっかけです。顧問が父の友人で、当時静大の准教授をしていた縁です。
(FF11の話をしてもいいんですが、長くなるんで)

当時のテコンドー部は創部一年目だったので、大学生のお兄さんお姉さんがとても可愛がってくれて、楽しかったのを覚えています。静大が結構好きだったんですよね。

大学に入学して部活を作ったときは、
「まぁべつに、俺の遊び場だから、4年後潰れてもいいや」
くらいの気持ちでやっていたのですが、10年も存続してしまいました。

これまでに部活は、静岡大学学長表彰2回、学生大会団体戦優勝2回、全日本大会入賞、(マイナー競技ゆえ入賞しやすいというのがあります笑)という輝かしい戦績を残せたのも、周囲の皆さんの暖かいサポートと、何よりその世代・世代の現役生の頑張りの賜物でしょう。

近頃、長大のアイスホッケー部を見ていても思いますが、勝利だけを目指して競技ができるのは大学生までです。うらやましいです。社会人になると、「仕事が、家族が」と勝利至上主義ではどうしても居られなくなります。学生が自身で運営する部活では、練習内容も含め自由になんでもやってほしいと思います。


ここに白状しますが、競技から離れたのは、競技が怖くなったからです。キャプテンだったときは、部費のために入賞する必要がありました。新参の部活には実績が必要です。練習場所や部費を確保するために一心不乱に参戦していました。

このITFテコンドーは、オリンピック競技のテコンドーとは異なります。
より空手やキックボクシングに近く、顔面パンチもあります。
有段者からはヘッドギア無しなので、失神やKOも起こります。

2010年全日本の組手の緒戦、アジア3位の選手にその日の午後の記憶を飛ばされてしまいました。パンチで顎を抜かれたか、倒れて後頭部を打ったか、そのどちらかで記憶を飛ばしました。
結局記憶の無いまま時間一杯戦ってしまったのですが、内容はボロボロ。




同級生に聞くと、しばらく記憶の混乱があって、
「今日は何日だ?俺はなんで全日本に出てるんだ?」
という質問を30分ほど何度も繰り返していたと言います。
その日の夜には良くなってたんですが…、同級生は青ざめた顔をしていました。

選手としてはいつの間にか消えた感じにして、周囲の皆さんには不義理なことをしたと思っています。

後輩の結婚報告で、そんな事が思い返されました。
次の5月で部活は満10年、11年目のシーズンに突入します。


自動代替テキストはありません。







(OB会作成の10周年記念G-SHOCKの裏側)

4月からの多くの新入生に大学生活を楽しんでほしいと思います。
その中で静大テコンドー部や長大アイスホッケー部を選ぶも良し、その他の部活ももちろん推奨です。10年経っても、そのときの話題で盛り上がれる友に出会えると思います。

現役生の武運長久を願います。

静岡大学テコンドー部HP
http://shizuokataekwondo.wixsite.com/shizudai-tkd